政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 今までが今までだったから、本当にこの変化には理解が追い付かなくて。今度は自分が泣いていることを自覚して涙をこぼし、秋瀬くんの身体にすがる。

「……ごめん」

 ぎゅう、と秋瀬くんが抱き締め返してくれたことにほっとする。少なくとも引き剥がそうと思うほど嫌われてはいない。もう少しだけ、このぬくもりに甘えてもいい。

「ごめんって言わないで」

 懇願するように訴える。

 だって、ごめんのあとに続く言葉を想像すると恐ろしくなる。

『ごめん、もう好きじゃない』

『ごめん、別れよう』

『ごめん、ほかに好きな人ができた』

 今、思いつくだけでもこんなにある。

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