政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 秋瀬くんになにも言ってほしくなくて、背中に回していた腕を手元まで戻す。そうして秋瀬くんの口を塞ぎ、いやいやと首を横に振った。

「しろひゃん」

 秋瀬くんがくぐもった声で私を呼ぶのを無視して、なにも喋るなと態度で伝えようとする。

 でも、それも続かなかった。秋瀬くんの口を封じていた手のひらを、ぺろりと舐められたせいだ。

「ひゃっ」

 びっくりして手を引いた私は、その勢いのままソファから落ちそうになった。ひっくり返りかけた私を支えてくれたのは、もちろん秋瀬くんだ。

「全面的に俺が悪かった。泣くほど不安にさせてたなんて知らなかったんだよ」

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