政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
「すごく怖かったんだからね! 目も合わせてくれないし、避けるし、ちゃんと喋ってもくれないし……!」

「わかっ、わかったから! ごめんって!」

 秋瀬くんが私の手を掴んで離そうとしてくる。まだ許せない気持ちが強くて、指先にぎゅっと力を入れた。

「もう、こんなことしないで」

 ふっと手の力が抜け、また目に涙が込み上げる。

「なんでこんなに好きなのにわからないの」

「……だって、俺がくっつくと嫌がるから」

 むう、と唇を尖らせて秋瀬くんが言う。でもこれに関しては秋瀬くんが悪いと常々思っていた。

「家以外でもやるからでしょ!」

「家でも逃げようとするだろ」

< 317 / 342 >

この作品をシェア

pagetop