政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 私では秋瀬くんの両手を掴んで押さえ込めないけれど、一瞬だけだったらどうにかなる。ぱっと離した手を素早く秋瀬くんのシャツの中に入れ、脇腹をこしょりとくすぐった。

 勢いよく吹き出した秋瀬くんがもがいて私の腕を逃れようとする。必死の抵抗を無視して、気にせずやれるだけくすぐり、脇腹だけでなく脇の下や腹部にも手を伸ばした。

 ひい、と秋瀬くんのひきつった声がしても無視をする。私が今日、名前を呼んでも返事をしてくれなかった回数だけ無視しようと決めた。

「真白さん、ごめんなさい! 許してください! ほんと無理、無理だから……っ」

「逃げたらもう一緒に寝ない」

「くっ……!」

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