政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
「キスの仕方、知らない?」

 なんで、どうして、と何度キスの合間に叫んだかわからない。

 唇を触れ合わせるだけならともかく、舌まで入れてくるなんて信じられなかった。

 キスの仕方なんか知らない、と認めたくない。呼吸もできなくて息を荒らげていると、ゆっくり唇を甘噛みされる。

「しろちゃんって、いじめるとかわいい顔するよな。好きだよ、その顔」

 だから会社で私だけを煽ったりからかったり、いじめてくるのか。

 会社のみんなは「ほかの奴に構ってもらえないから、甘えてるんだろ」なんて笑っていたけれど、とてもそんな理由ではない。

 この男は明確な意思を持って私をいじめている。人前での愛想のいい顔を伏せ、この上なく意地悪な笑みを浮かべながら。

「っ、この腹黒男」

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