政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 ふん、とそっぽを向くと、秋瀬くんがまた笑ったようだった。

 片思いどころか昨日からは夫婦です、なんて言ったら葉鳥さんはどんな顔をするだろう。いや、知られたくはないのだけれど。

 なにも知らない葉鳥さんが、秋瀬くんにつられたように目元を和ませる。

「やっぱりダブル和泉に任せるって決めて正解だな。阿吽の呼吸って感じで。相性ぴったりだよ」

「今のやり取りのどこを見て、大丈夫だと思ったんですか……」

 額を押さえた私の肩を、横から秋瀬くんが馴れ馴れしく抱く。

「頑張ろうなー、しろちゃん」

「その呼び方で呼ばないで」

 肩の手を軽く払い、ついでにぎゅむっと足を踏みつけておく。

 大げさに痛がる振りをする秋瀬くんは、もう放っておいた。



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