政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています

　擦り合わせのために秋瀬くんの過去のデータを見ながら、だから父は秋瀬くんを選んだのかとまた思った。父が好むデザインは秋瀬くんの作るものに近い。

　ほんの少し、胸がきしりと軋んだ。

　父はたぶん、秋瀬くんを気に入っている。私とは違って。



　これまでの業務をこなしながら、企画について着々と進める日々が続いた。

　あっという間に一週間が経ち、ひとまずデザイン書の初稿を葉山さんに提出したところで木曜の夜がやってくる。

　最初こそ秋瀬くんとの同棲なんてどうなるかと思っていたけれど、案外うまくいくものだと慣れ始めた頃の週末だ。明日を過ぎれば訪れる土日をどんなふうに過ごそうかと、定時まであと五分というところで考えていたとき、ぽん、と肩を叩かれる。

「和泉ちゃん、今日このあとって暇？」