政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 背後で秋瀬くんが動く気配がした。振り返らずに本棚を見ていると、後ろからそっと抱き締められる。

「惚れ直した?」

「最初から惚れてないけど」

 秋瀬くんがまだ持っていたアイスをやっと取り上げ、腕の中から抜け出そうとする。

 振り返ったそのとき、とん、と肩を押された。そのまま背中を本棚に押し付けられる。

「じゃ、今惚れてくれ」

 天上のライトが秋瀬くんの背後に隠れる。陰になった秋瀬くんの顔が近づくのを感じ、きゅっと目を閉じた。

 ゆっくりと、まるで味わうように唇を重ねられる。こうなるとわかっていて目を閉じた自分に動揺した。

「しまったな、先にアイスを食べさせておけばよかった」

「どうして……?」

「キスがバニラ味になったかもなーって」

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