政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 大きな手が、アイスを持った私の手を包み込んでくる。私が持っているのはバニラ味なのだろう。ちらりと視線を下に向けると、秋瀬くんの手にあるイチゴ味のアイスが見えた。

 秋瀬くんがアイスを食べたあとだったら、イチゴ味のキスになったかもしれない。

 ほとんど無意識に考えてしまい、ハッと自分の口元を押さえる。

 どうして当たり前のようにキスを受け入れているのだろう。私たちは夫婦でも、恋愛から始まった夫婦ではない。拒む私がおかしいのではなく、気安くキスをしたり触ってくる秋瀬くんがおかしいのだ。

「しろちゃん?」

「っ、見ないで」

 秋瀬くんなんて嫌いだ。アイスだってすぐにくれなかったし、私の気持ちを確認せずにすぐキスをするから。

 なのに、どうしてこんなにも顔が熱い?

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