政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 十人ほど入ればいっぱいになってしまう小さめの会議室で、一番奥の席を取った。持ってきた資料を並べ、ノートパソコンを開く。

 約束の時間のちょうど一分前になって秋瀬くんが現れた。

「お待たせ」

「遅刻したらどうしてやろうかなって思ってたとこ」

 本当はふたりきりでドキドキする気持ちを抑え、わざとつんとした態度で接する。

「遅刻の罰ゲームね。お風呂に入ったあと、一時間ぐらいマッサージするとか?」

 相変わらず秋瀬くんはまったく堪えた様子を見せない。それどころか面白がるように笑っている。

「秋瀬くんに撫で回されるのは嫌だな」

「優しく撫で回すよ。どう?」

「変態」

 はは、と秋瀬くんが声を上げて笑うのを横目に、さっさと仕事を済ませようと資料の一部を差し出した。

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