俺様社長はハツコイ妻を溺愛したい
「夫婦仲を深めるには、ベッドの中が一番良いと思うんだ」
「そんなの深めたくない!」
「冷たいことを言うな。 俺はお前を抱く」
抱くーーー!?
何それ何それ、そんなの聞いてない!
女避けの妻である私を、どうして抱くの!
「嫌です!」
「できればお前には、跡継ぎを産んでもらいたい。 それは一条にとっても不利益になることはないし、お前のおばあさんに曾孫を抱かせることだってできる。ご両親だって、孫は抱きたいだろ」
跡継ぎ………
確かに一条家には必要だろうけど。
そんなの、外で愛人でも作って産ませりゃ良くない?
確かに曾孫は抱かせてあげたいけど、さすがにこればっかりは祖母のためといえ頷けない。
好きでもない男に身を委ねるなんて、そんなこと誰が――
「それに何より、俺がお前を抱きたいんだ。お前は俺のものだって証を、刻み込みたい」
「そんなの……!絶対にい………!?」
刻み込まれるなんてゴメンだ。
嫌だと言うつもりが、それを許してもらえなかった。
蒼泉はグイッと私の顎を持ち上げ、強引にキスをした。
「……ちょ…!……なに……何するの……んっ」
「キスだ」
そんなの分かるわ!
私が言いたいのは、どうしてキスしてんのってことで!
そんな反論をする間も与えず、蒼泉は私の唇から離れない。
必死に唇に力を入れるのに、彼の力の前には敵わない。
押し入ってきた舌は私の口腔で好き勝手に動き回る。
なんでこんなことに。
なんで私、こいつと濃いキスしちゃってんのよ!
彼から離れようともがいていると、やがて唇は離れていった。
一気に酸素が舞い戻ってきたようで、クラクラする。
このクラクラは、こいつとのキスが良かったからとか、そんなのじゃないと信じたい。
「今日はこのくらいでいい。 お前の身体に負担をかけては、ご両親とおばあさんに面目が立たないからな。
それに、明日からはずっと一緒だ。覚悟しておけ」
一応、体調を崩しやすい私の身体を気遣っているつもりだろうか。
だけどそんなの、あんなキスをされた手前、素直に受け取れはしない。
「何もしなくてもベッドは同じだ。 ソファで寝ていても俺が抱っこでここに運び込む」
抱っこ。それは避けたい。
私が蒼泉に抱っこされてる姿なんか、想像しただけで身震いするわ。
何も言わず突っ立ったままの私に、蒼泉は一番風呂を促し、リビングルームに戻っていった。