俺様社長はハツコイ妻を溺愛したい

「よし。完成」

今日のメニューは、秋刀魚の塩焼きとほうれん草のおひたし、具だくさんの味噌汁にふっくら炊けた白米。

一通り揃っている家具家電はどれも新品で、見たことの無い調理器具を使うのは楽しかった。


秋刀魚は今日の特売品で安かったので即決で購入した。

料理中、蒼泉には荷物の片付けを促したのだが、彼はキッチンの向かい側でじーっとこちらを見つめていた。

無駄に緊張させられたが、なにかする度におぉ、と歓声を上げるのが面白くて、説明をしながら調理をしていると、お料理番組みたいになってしまった。

片付けそっちのけで、早く食べたいと言うので食卓につき、初めて一緒に食事となった。

まずお味噌汁に手をつける蒼泉の顔色を、じっと伺う。

「美味い」

ほおっと息をついて「よかった」と私も一息。
庶民の味が御曹司様にご満足いただけるか、不安はあったのだ。

「本当は豚汁にしたかったんだけど、豚肉が高くてやめたのよ」

「高くてやめたのか? あぁそうか、まだ渡してなかったな」

箸を置いて席をたち、戻ってきた蒼泉の手にはカード。

「これからは、これを好きに使え」

「えぇ? これ、カードの色が黒い……」

蒼泉はこくこく頷き、秋刀魚をひと口食べてまた美味い、と言う。

「ありがとう。使わせてもらうわ」

その姿に嬉しくなりながら、お礼を口にする。

「夫婦なんだから当然………だが、確かに、礼を言われるのは悪くないな」

おひたしを摘んでそんなことを言うので、驚きながらも「でしょ」と返す。

………和やかすぎる。普通の夫婦みたいに平和的な会話なのは、どうしてだろう。

私たち、出会ってまだ二日よね?
全然そんな雰囲気じゃないのが不思議すぎる。

昨日はあんなキスに怒ったのに、今日は作ったご飯を褒められて嬉しくなって。

どうかしてる!順応するのが早すぎるのは、私も同じじゃない。
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