俺様社長はハツコイ妻を溺愛したい

「そんなとこに、陸さん、あなたがやってきたわけよ〜。 社長が結婚して、相手が秘書としてここに来るって聞いた時はもう、バンザイして喜んだわ!」

「そうだったんですね……」

「オマケにこーんな可愛い娘ときたら、もう!
あなたくらいなら、魔性の男にやられることはなさそうねー」

うぅ。既にやられかけてますとは、言えない。

「さ、さ、陸さんのデスクはここよー。 あ、名前で呼んだ方がいいわね。 どう?」

「はい。是非。 えっと、皆さんは……」

「あぁ!そうね、名乗ってなかったわ! 私は、ここを取り仕切ってます、中野ミチコと言います。ミチコでいいわよ。
これからよろしくね、あやめちゃん」

取り仕切ってるということは、総務部長…?
それとも秘書室長とか?

聞くと、どうやらこの部署は、なんなのかハッキリしていないらしい……
でも呼び名は必要なので、一応皆さん〝総務部〟と呼ぶそう。

総務と秘書は業務が似ているらしく、この会社の場合ごっちゃになってやらされてるとか……

それもこれも蒼泉の仕業ってわけね。

「ミチコさん…よろしくお願いします!」


それから他の方とも挨拶を交し、このフロア一帯についても説明をしてもらった。




「お。おかえり」

「ただいま戻りました」

しばらくして社長室に戻ると、パソコンから顔を上げた蒼泉がニヤリと笑った。

この男、どこまで知っているのやら。

「どうだった?」

「皆さんとても気さくな方でした」

「だろうな。 俺の悪口で意気投合してんだろ」

自覚はあるらしい。

「まさか。社長のこと、面倒臭い人とは言ってましたけど」

悪戯っぽく口角を上げて言うと、蒼泉はふんと鼻を鳴らして視線をパソコンの画面に戻した。

嘘は言ってない。
皆さんああ言っていたけれど、一種の愛を感じたから。
今日は見かけなかった山倉さんもそう。

なんだかんだ愛される社長。
うん。 確かに魔性の男ね。
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