俺様社長はハツコイ妻を溺愛したい

翌週金曜のことだ。

その日私は、ちょっとした体の違和感に目が覚めた。

だるい。 風邪をひいた時のようだ。

疲れが溜まっているのだろうか。
でもまだ働き出して二週間……
新しい職場の人も皆さん優しいし、仕事はスーパーのパートよりは大変だけど、それほど量があるわけじゃない。

それに、今日は金曜。明日は土曜でお休みをもらっている。
今日一日乗り切れば明日は一日中休めるし、何より下っ端の私が簡単に休むなんて……

上体を起こして考えていたら、隣で眠る蒼泉も起き出した。

「ごめん、起こしちゃった?」

「いや、いつも起きる時間だ」

うそ?まだ四時半よ。いつもは二人してグッスリ寝てる時間だ。

「それより、どうした」

「ううん、目が覚めちゃっただけよ。また寝直すわ」

そう言うと、蒼泉はひとつ頷いてまた布団に潜った。
やっぱり起こしちゃったのね。

私も再び布団に戻ったのだが、寝直すことは出来なかった。

「おはよう。朝ごはん出来てる」

「おはよう」

結局、六時に起き出した私は、いつもよりちょっと豪華な朝ごはんを作って自分の体調を誤魔化した。

「なんか、豪華だな」

蒼泉の呟きは聞かなかったことにして、私はコーヒー片手に席に着く。

「あやめは、それだけ? 顔色が悪いが――」

「大丈夫!今朝はちょっと食欲が無いだけよ」

本当はコーヒーすら胃に入れたくないのだが、食わず飲まずだと蒼泉に心配をかけてしまう。
顔色が悪いことまで勘づかれては、一層油断出来ない。
ひとまず、そうかと納得してくれた様子で安心した。

それから二人で身支度を済ませて家を出る。
朝は一緒に出勤が板に付いてきた。帰りは私の方が先に帰宅するので、毎日夕飯はきちんと作っている。

だけど今日は無理そうだ。
帰ったら休ませてもらおう。



自分の体調のことはよく分かっているつもりでいた。

何しろ身体の弱さとは幼少の頃からの付き合いだったから。

でも大人になって、だいぶ体力がつき、完全に油断していた。
蒼泉にバレないためには油断は惜しまなかったのに。

前なら休養を選ぶ状況で、このくらい大したことないと高を括っていた。

時間が経つごとに体調は悪化していき、今は頭痛と吐き気と倦怠感。
最悪だ。

ランチも断って、その時間はトイレで時間を潰した。
社長室には蒼泉がいるからだ。

でもこうまでなったら、さすがに早退させてもらおう。
初日からここまで張り切りすぎたようだ。
蒼泉の言う通りにしていれば良かった。

おぼつかない足取りでなんとか社長室まで戻ると、蒼泉がいない。

気分の悪さから、なんで居ないのよ!と八つ当たりしてしまう。

しかし探しに行く余力も無くなってきて、いよいよヤバいと今更ながら危機感を覚え、自分のデスクに座り込む。
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