俺様社長はハツコイ妻を溺愛したい
翌朝、挟んだ体温計が音を鳴らす。
〝三十七度二分〟
微熱があるが、過去一の治りの速さだった。
床に胡座をかく蒼泉もほっとしたように笑う。
けれど直ぐに表情を引き締めると、「まだ油断はできない」と言って私を布団の中に押し戻す。
「待って、蒼泉。 お風呂に入らせて」
腕を掴んで訴えると、訝しげな表情は少しだけ緩まり、OKをもらえた。
お風呂から上がると、きちんと髪を乾かしてからリビングに戻る。
蒼泉の言いつけを守って損は無いと、今回身をもって実感した所存であります……。
「蒼泉――」
リビングのソファで、蒼泉は眠っていた。
寝るつもりはなかったのだろう。 手には雑誌、体勢は座ったままだ。
多分、一晩中私の様子を気にしていてくれたせいだ。
疲れているに決まってる………
私はクローゼットにしまってあったブランケットを引っ張り出してリビングへ持っていく。
座ったままの蒼泉の体を横に倒すことに成功し、雑誌をローテーブルに置いて上からブランケットを掛けた。
「ありがとう。 おやすみなさい」
寝顔に話しかけ、軽く手を頬に触れてハッとする。
やだ、私、何やってんの!?
ほっぺたなんか触って、ばか!変態!
蒼泉に触れた右手の甲を包み込み、かっと熱くなる頬に戸惑う。
心臓が忙しなく動いている。
このままここにいたらまた熱が上がってきそうで、私は小走りで寝室に引っ込んだ。