チャラい彼は、意外と一途


「何言ってるの?」


訝しげな表情を浮かべてる。


当然だよね……私からこんなこと言われる筋合いもないだろうし。


「佐野先輩が先輩のことを好きになるのは無理ですよ。まず先輩が好きになってないんですから。それは佐野先輩にも原因があると思いますけど、でも縁を切ろうと言われたのは仕方ないんじゃないですか?それを怒るのはおかしいですよ」


そこまで言い切ると、先輩の顔が変わった。


とても怒ってる顔に。


「あなた、本当に生意気よね!」


手を振りかざされたから、とっさに目をつぶった。


だって、殴られると思ったから。


でも、なかなか痛みはやってこない。


ゆっくり目を開くと……


「こんなことふゆちゃんにするのはおかしいんじゃない?」


「ゆ、佑都……」


いつの間にか、佐野先輩がいた。


どうして、ここに……


「佑都が私と縁を切ろうって言うからでしょ」


「もう許してよ。僕だって、殴られたんだよ?それで、ふゆちゃんを殴るのはダメ。ふゆちゃんに酷いことをしたら、女の子でも許さないから」 


女の子には出さないような低い声で言った。


こんな声、出すんだ……


いつもヘラヘラしてる佐野先輩とは別人みたい。



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