チャラい彼は、意外と一途


「あ、うん」


でも、どうして……


「今日ね、律先輩にカフェ行かないかって誘われたの!」


顔に出てたのか、それともただ単に言いたかっただけなのか、紗奈ちゃんは理由を説明した。


そっか、凍堂先輩に……


「よかったね!」


「えぇ!じゃあね、ふゆ!」


「うん、バイバイ」


紗奈ちゃんにああ言われてしまったから、しょうがなく佐野先輩のところに行く。


「何ですか、佐野先輩」


「あ、うん。あのさ……」


どこか緊張している様子。


なかなか話を切り出さない佐野先輩。


もしかして、用ないのかな……?


「言いたいことないなら、帰りますけど……」


「あ、いや。もう覚悟を決めるよ。ふゆちゃん、僕とデートしてくれる?」


佐野先輩からのまさかの誘いに思考が固まった。


……デート?


「本気ですか?」


「うん、もちろん本気」


その目は真剣そのもので、からかってるわけじゃないことが分かる。


でも……


「すみません。デートには……」


「お願い!僕とデートして!」


断ろうとしても、今回は妙に粘り強い。


何回もお願いされて、私の方が先に折れてしまった。


「分かりました」


「ありがとう、ふゆちゃん!」


湊君が好きなのに、行くべきじゃない。


それは分かってるんだけど……何でだろう。


どこか、自分の中で楽しみ……そんな言葉が浮かんでくるのは。


それは考えてもよく分からなかった。


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