チャラい彼は、意外と一途


好きでもない人と手を繋いでるんだから。


「お願い」


懇願するような顔に何も言えなくなってしまう。


……佐野先輩はずるい。


そんな顔で言われて、無理と言える女の子はきっといない。


「ふゆちゃん、何見たい?」


「え、あ、えっと……」


急すぎて、答えに詰まった。


あるはあるけど、それがここにあるのかっていうのが問題だな……


「イルカショーが見たいです。あるかは分からないですけど」

 
「あぁ、それなら大丈夫。ちゃんとあるよ。確か、17時からだった気がする。着いたら、確認しないとね」


ほんと、すごい先輩。


女の子が何で佐野先輩を好きになるとか少し分かった気がする。    


こうやって、女の子をエスコートするのが上手いから。


「あ、着いたよ」


佐野先輩の言葉に見てみると、水族館へようこそと書かれた看板が目の前にあって。


大きくて、綺麗な建物が。


うわぁ、大きい……

 
「中に入ろっか」


「はい」


中に入ると、辺りを見回した。


設備も整っていて、綺麗。


できたばっかりなのかな……?

 
私がそう思っている間に、佐野先輩はチケットを買う。


「あっ、佐野先輩。私の分は払います。いくらでしたか?」


「いいよ、僕が払う。僕のわがままでここに連れてきたんだから」



< 130 / 300 >

この作品をシェア

pagetop