チャラい彼は、意外と一途
好きでもない人と手を繋いでるんだから。
「お願い」
懇願するような顔に何も言えなくなってしまう。
……佐野先輩はずるい。
そんな顔で言われて、無理と言える女の子はきっといない。
「ふゆちゃん、何見たい?」
「え、あ、えっと……」
急すぎて、答えに詰まった。
あるはあるけど、それがここにあるのかっていうのが問題だな……
「イルカショーが見たいです。あるかは分からないですけど」
「あぁ、それなら大丈夫。ちゃんとあるよ。確か、17時からだった気がする。着いたら、確認しないとね」
ほんと、すごい先輩。
女の子が何で佐野先輩を好きになるとか少し分かった気がする。
こうやって、女の子をエスコートするのが上手いから。
「あ、着いたよ」
佐野先輩の言葉に見てみると、水族館へようこそと書かれた看板が目の前にあって。
大きくて、綺麗な建物が。
うわぁ、大きい……
「中に入ろっか」
「はい」
中に入ると、辺りを見回した。
設備も整っていて、綺麗。
できたばっかりなのかな……?
私がそう思っている間に、佐野先輩はチケットを買う。
「あっ、佐野先輩。私の分は払います。いくらでしたか?」
「いいよ、僕が払う。僕のわがままでここに連れてきたんだから」