チャラい彼は、意外と一途


「落ち込まないで。それは直接本人達に聞きなさい。多分、私の予想通りだから」


紗奈ちゃんがどういう予想をしてるのか、私は知らない。


確かに、湊君と萌ちゃんに聞いた方がいいよね。


確実に知れるんだし。


「ふゆちゃん」


私の名前を呼んだのは、毎朝のように来るあの人……佐野先輩。


クラスの人もだいぶ佐野先輩に慣れたみたい。


佐野先輩に近寄っていくと、


「湊君と萌、別れたんだってね」


「そうらしいですね」


やっぱりその話題……


佐野先輩の顔をちゃんと見ると、どこか不安そうな顔をしていた。


そんな顔をしているわけが自意識過剰でなければ多分合ってる。


「理由知ってる?」


「いえ、知りません」 


「そっか。萌の方は分からないけど、湊君の方は分かったよ」


「えっ、本当ですか?」


「うん」


佐野先輩は湊君の方は分かった。


その理由を知っているのなら、私も知りたい。


「ふゆちゃんは……ううん、何でもない。それだけ確認しときたかったから。またね」


聞こうと思ったのに、聞けなかった。


顔は相変わらず不安そうで、暗かった。


理由を知ってるから、そんな顔してるの……?


湊君の理由は何……?


去っていった佐野先輩の後ろ姿を見ながら考える。


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