チャラい彼は、意外と一途
「僕がふゆちゃんともう少し一緒にいたいと言ってもダメなの?」
ドキッと胸が高鳴った。
佐野先輩はずるすぎる。
そんなこと言われて、ダメって言えるわけない。
それに、私もそう思っていたから。
「ずるいですよね、佐野先輩って。私もまだ一緒にいたいので、嬉しくです。ダメなわけないですから」
「……はぁ。僕からしてみれば、ふゆちゃんの方がよっぽどずるいよ」
「えっ、そんなことないですよ」
「そんなことあるから。いや、いいや。ほら、帰ろう?」
佐野先輩は手を差し出してきて、手を繋ぐんだと分かって少し躊躇したけど、私も手を伸ばす。
「うわ、ふゆちゃんの手冷たい」
「佐野先輩の手が熱いんですよ」
そう言い返した時、佐野先輩が手を絡めてきた。
……恋人繋ぎ。
「さ、佐野先輩、これ……」
「恋人繋ぎだよ。この方が恋人っぽいし、温まるでしょ?」
私の方がずるいと言ったけど、やっぱり私は佐野先輩の方が何倍もずるいと思う。
そんなドキドキさせること簡単に言うんだから。
冬の夜の寒い静寂の中、私と佐野先輩は恋人繋ぎをしているシルエットが映った。