チャラい彼は、意外と一途

 
「そういえば、僕とふゆちゃんってまだ連絡先交換してないよね?」


「確かにそうですね。しましょう」


「うん、しよう。スマホ出して」


スマホを取り出して、お互いの連絡先を交換する。


「登録完了。あ、ふゆちゃんの家ここ?」


「はい」


私の家に着いて、別れる間際……


「じゃあね、ふゆちゃん。また明日」


そう言った後に、チュッと小さなリップ音がした。 


今のって……


「さ、佐野先輩……」


「今度は唇にするから」


悪戯っぽい笑みを浮かべて、そのセリフを最後に佐野先輩の姿が遠ざかっていった。


佐野先輩の姿を見届けながらら私は家の前で立ち尽くす。


佐野先輩、今私のほっぺにキスした……
  

そう再認識して、心臓のポンプが一気に盛んになる。


うぅ、心臓に悪い……


火照りが冷めるのを待ってから、家の中に入った。


「ただいま」 
 

「ふゆ、今日は遅かったわね」


「うん、ちょっとね」


まだ恥ずかしいから、彼氏のことは言わない。


「ふふっ、何かいいことがあったみたいね。あえて聞かないけど、また今度教えてね」


なんか、バレてるっぽい。


もしかして、私そんな顔してたのかな……


「ふゆ、手を洗ってさっさと食べちゃいなさい。今日はあなたの好きなビーフシチューよ」


「ほんと?やった!」


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