チャラい彼は、意外と一途

「あの、佐野先輩」


「んー、何？」


「佐野先輩は萌ちゃんと付き合ってたそうですね」


「そうだけど。萌と仲良くなってるの？」


「はい」


驚いたような顔をされた。


でも、それは私も。


萌って呼び捨てで呼んでるんだ……


佐野先輩にしては珍しい。


それに、球技大会の時は萌ちゃんってちゃん付けで呼んでたのに……


もしかして、湊君に気を遣ったのかな……？


「萌と付き合ってるの湊君だよ？なのに、仲良くなってるとか。ふゆちゃんってバカなの？」


「バカって何ですか」
　　

「だって、本当のことでしょ。萌から湊君の話聞くの辛くないの？」


「いいんですよ。それよりも、先輩にしては珍しく呼び捨てで呼んでますよね？先輩は萌ちゃんのこと好きだったんですか？」


ようやくこの話に持って行けたかも。


多少強引だったけど。


「好きだった、か。まぁ、そうかもね。ある意味、たくさんの彼女の中で1番好きだったかも。唯一、本気になりかけた相手だったし。呼び捨てで呼んでるのは昔からそう呼んでるから」


「そう、なんですか。本気になりかけたというのは……」


「本気になる前に振られちゃったから。湊君に取られちゃった」