チャラい彼は、意外と一途


いつもみたいな軽口。


でも、こんな言葉にも意外と傷ついてたりするのかな……?


そこは本人に聞いてみないと分からないけど。


でも、佐野先輩はきっと本当のことを言わないだろうな……


「あの、佐野先輩!」


急に聞こえた女の子の声。


その子は酷く緊張しているみたい。


「ん?どうしたの?」


その子に完璧な笑みを浮かべて、身を屈む。


距離が近くなって、普通の女の子なら失神するかもっていうレベル。


「えっ、あ、えと。わ、私は山口ゆめです!先輩のことが好きなんです!お願いですから、私とちゅき合ってください!」


噛み噛みだね。


本当に緊張してるんだな……


「ふっ、可愛いね。いいよ、付き合おうか」


「本当ですか?」


「うん」


「あ、ありがとうございます!よろしくお願いします、佐野先輩!」


「こちらこそよろしくね、ゆめちゃん」


その子はぱーっと走っていって、すぐに姿が見えなくなってしまった。


私達の間に微妙な空気が流れる。


「佐野先輩、さっきの子と付き合うんですね」


「うん、そうだよ」


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