いつの間にか、君に恋していたんだ。
伊鳥ちゃんの心情がなんとなく分かった。
伊鳥ちゃんはいつも家に帰りたくないみたいだった。
それはこういうことだったのか……
その間にも親子は楽しそうに会話をしていて。
これ以上会話を聞いていると気分が悪くなりそうで、中に入った。
途端に俺に目を向ける親子2人。
「あ、輝楽さん」
「氷枕を取りに来たんだけど」
「えっ、わざわざあんな奴のためにしなくていいですよ。それより、私と一緒にお茶でも飲みに行きません?」
俺の腕に絡んで媚びるような姿に本気で吐き気が込み上がってきた。
同時に怒りも。
何で、あんないい子をあんな奴扱い……?
あれほどいい子なんているはずもないのに。
「触んな。それと、行くわけない。お前みたいなのと行くとか死んでも無理」
苛立ちを隠すことなく言うと、怯えが混じる。
所詮、この程度。
この親子に聞いても無駄だと判断し、勝手に氷枕とタオルと洗面器を持って、伊鳥ちゃんの部屋に戻った。
伊鳥ちゃんの頭を軽く上げて、氷枕を置く。
その後に、タオルを伊鳥ちゃんのおでこに置いた。
そういえば、体温測ってないよな。
少し探してみたけど、体温計は見当たらない。