いつの間にか、君に恋していたんだ。
部屋の中をいじられたくないだろうし、今日はしょうがないか。
明日測ろう。
体温計は諦めて、伊鳥ちゃんを見つめた。
あんなに気分が悪かったのに、伊鳥ちゃんの顔を見てると、それがなくなった。
……伊鳥ちゃんは本当に不思議な子だな。
俺の心をこうも和ませてくれる。
伊鳥ちゃんほど優しくていい子は今まで見たことがなかった。
同時にこんなにも自分の容姿に無自覚で鈍感な子も。
なのに、家ではこんな扱い……
毎回受けてるのかと思うと、イライラが増してきた。
「……んっ」
色っぽいくぐもった声。
それに、ドキッとする。
苦しそうで、俺は伊鳥ちゃんの髪に触れた。
優しく撫でると、苦しそうな顔が少し安らぐ。
ーー今、明確に思った。
この子を守りたい……
好きだ……
自然とそう思った俺に1番驚く。
ようやく、俺は自分の気持ちを自覚することができた。
そうか、そういうことだったのか……
自覚した途端に、伊鳥ちゃんへの気持ちが溢れていった。
こんなにも大きくなっていたこの気持ちを俺は今まで自覚できてなかったんだな。
自分に呆れながら、眺める。
さっきよりも安らいだ寝顔。
自覚したら、もう可愛いとしか思えない。
太陽の好きな子である伊鳥ちゃんを好きになっちゃいけなかったのかもしれない。
でも、もう無理だから。
「……んっ……き、頼君……」
突然出てきた男の名前。
誰だよ、その男……
そう思ってしまうくらい俺は……
「覚悟しててよ、伊鳥ちゃん」
近づいて、そっと頬にキスをした。