いつの間にか、君に恋していたんだ。
俺は全く緊張していない。
隣にいる宇内先輩も同じだろう。
ーーこの時はまさかバイトに入ってくる子が伊鳥ちゃんだとは思ってもいなかった。
数分待つと、オーナー達が入ってくる。
「あ、オーナー」
「せっかく私休みだったんですから、勘弁してくださいよ」
「もしかして、その子ですか?」
新しく入ってくる子は緊張してるのか、居心地が悪いのか、下を向いてるけど。
あの子は……
「そうよ。今日から入るんだけど、私の姪にあたる子よ。はい、自己紹介」
「あ、はい」
そう言って、その子は顔を上げた。
顔が見えて、俺は息をのんだ。
伊鳥ちゃん……
伊鳥ちゃんも俺を見て、驚いたような顔をする。
バイト先を今まで言ったことなかったもんな。
お互いに驚いた顔で少しの間見つめ合う。
でも、すぐにハッとしたような顔になって、自己紹介し始めた。
「私は琴月伊鳥です。バイトするの初めてで、分からないことも多いですが、精一杯頑張ります。よろしくお願いします」
律儀に頭をぺこりと深く下げる。
その拍子にさらさらな髪が揺れた。
「うわ、可愛いー」
「性格良さそうな子でよかった」
「こちらこそよろしく!」
「よろしくねー!」
男はだらしなく鼻の下を伸ばして、女は伊鳥ちゃんが来たことを意外にも歓迎しているようだった。
新しく入ってくる子が伊鳥ちゃんとは……
嬉しいけど、素直に喜べない。