いつの間にか、君に恋していたんだ。
「べ、別に何も……」
「ここはキャバクラとかじゃないんですよ。この子に汚らわしい手で触らないでもらえます?」
感情のコントロールができない。
怒りを露わにしているだろう俺に、客は怯えた顔になった。
「チッ」
舌打ちをした後、ちゃんと店から出ていってくれてホッとした。
「輝楽さん、ありがとうございました」
安心したような笑顔に内心ドキッとしつつ、平静を装う。
「どういたしまして。それより、伊鳥ちゃん来て」
伊鳥ちゃんをこのままいさせるわけにもいかない。
まずはオーナーに報告しよう。
「オーナー、さっき伊鳥ちゃんがガラの悪い客に絡まれてたので、助けました。もう帰らせた方がいいんじゃないか?」
「まぁ、そんなことが!いいわよ、帰って!」
「えっ、でも……」
「いいから、帰りなさい」
オーナーが伊鳥ちゃんに過保護みたいでよかった。
伊鳥ちゃんを休ませてあげられる。
「分かりました」
「なら、俺が送ります」
「いや、神崎君が送ってくれなくていいわ。私がするから。その代わり、オーナーは抜けることになるけど、大丈夫よね?」
「……それは大丈夫ですけど」
「なら、そうさせてもらうわ。伊鳥ちゃん、それ着替えて早く帰りましょう」
「は、はい」