いつの間にか、君に恋していたんだ。
俺の言葉を遮って、無理矢理リビングに向かって俺の手を引っ張っていった。
「ほら、輝楽兄」
「そんな引っ張んなくても、ちゃんと行くよ」
「いや、輝楽兄だから分からない」
「俺のことを何だと思ってるんだよ」
そんな俺達のやりとりに、女は笑ってる。
「何笑ってるの?」
「すみません。何でもないです」
またも冷たい目を向けていただろう俺に、また怯えたような顔をする。
確かに他の女とは違うみたいだけど……こんな風に怯えられてもな。
俺のせいだけど……
「輝楽兄怖がってるじゃん。伊鳥は何もしてないんだからさ。一応言っとくけど、伊鳥は本当に輝楽兄の知ってる女の人じゃないよ」
俺、悪者なわけね。
別に俺が悪いからいいけど、なんか……後味悪い。
「あの。私のことよく思ってないのは分かってます。神崎さんが女嫌いなのは、太陽君から聞きましたから。私のこと嫌いでもいいですけど、できれば仲良くしてもらえたら嬉しいです」
まだ怯えていたみたいだけど、はっきり言ったその子。
……そんな怯えた顔で言われたら調子狂う。
「はぁ、分かった。そんな怯えなくても大丈夫だから。それと、別に君のことを嫌いってわけじゃない。ただ、女が嫌いなんだ。君のことも女嫌いってひと区切りにしてるだけ」