いつの間にか、君に恋していたんだ。


そう言って見せられた動画。


その動画は、木梨先輩が私のロッカーに3万円を入れてるところがバッチリ映っていた。


まさか撮られてるとは思わなかったらしく、木梨先輩の顔はさっきとは一変して青ざめている。


「いい加減にしてもらいたいものね。前の子もあなたのせいでやめたんでしょう?」


前の子……?


もしかして、同じようにされてやめた人がいるのかな……?


「もうあなたをここで働かせることはできないわ。今すぐやめてちょうだい」


……こんなきつい言い方を小夜さんを初めて見た。


「……すみませんでした。言われた通りすぐにやめます」


逃げるように、木梨先輩はお店から出ていった。


「ふぅ。大丈夫?伊鳥ちゃん」


「ごめん。もっと早く言えばよかった」


「大丈夫です。助けてくださりありがとうございました」


本当によかった。


小夜さんと輝楽さんのおかげだ。


「ごめん、伊鳥ちゃん!」


「うちら疑っちゃった。ごめんね!」


「本当にごめんな!」


「あいつの言葉を鵜呑みにしちまった。よくよく考えたら分かるよな」


先輩方が謝ってくれた。


別に謝らなくてもいいのにね。


でも、その気持ちが嬉しい。


「謝らなくていいですよ」


先輩方は悪くないのだから。


「ほんと、伊鳥ちゃんって優しいー!」


「性格もいいとか最高だよな!」


そんなことはないけど……


まぁ、今回のことで先輩方との距離が縮まった気がするからよかった。


ここでの生活は心から楽しいと思える。


これからもバイトを続けていきたいな……


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