いつの間にか、君に恋していたんだ。
「可愛いね」
俯いた私を紫織さんがじっと温かい目で見ていたなんて気づかなかった。
それに、呟いた言葉も。
輝楽さん達のマンションに着いて、いつも通り夕食を作り始める。
でも、楽しいとかそんな気持ちにはなれなくて。
ただただ苦しい。
輝楽さんは紫織さんの彼氏……
そう思うと、苦しくてしょうがない。
「伊鳥ちゃん、どうかした?」
「いえ、何でも……」
私の様子がよっぽどおかしいんだろう……
心配されてしまった。
でも、それを嬉しく感じてしまう私は最低かもしれない。
だって、私のことを気にかけてくれてる証拠だから。
内容は言えないけど……
「……そう」
輝楽さんは浮かない表情を浮かべてたけど、リビングに戻っていった。
「ねぇ、伊鳥」
今度は太陽君が来た。
「何?太陽君」
「なんか、伊鳥の様子がおかしいからさ。何かあった?」
太陽君にまで心配されてしまう。
「ううん、何でもないよ」
私は笑って誤魔化した。
太陽君にも言えるわけない。
「我慢しないで言えよ?」
「うん、ありがとう」
太陽君は優しい。
それは輝楽さんにも言えること。
その後は心配されないように、なるべくいつも通りを装った。
「じゃあ、私もう帰りますね」
「じゃあねー、伊鳥ちゃん!」
「またね」
「バイバイ、伊鳥!」