いつの間にか、君に恋していたんだ。


心に見えない刃でグサリと刺された。


そう言われるのにも慣れてるのに、それでも傷ついてしまうのは……心が弱くて、未だに信じてるからかもしれない。


そんなのありえないのに……


「はい、分かりました」


特に言い返さず、ただ謝った。


ここで言い返しても無駄だし、もし言い返してもっと酷い言葉が返ってくるかもしれないから。


結局、怖いだけ。


「すぐに作ります」


台所に行って、すぐに作り始める。


気分が重い。


でも、作らなくちゃいけない。


これが地獄じゃなかったら、何ていうんだろう……


「出来ました」


「遅いわね」


「待ちくたびれたー」


そんなに遅くなったつもりはないのに、いちいち文句を言われる。


こんなのこの家では当たり前なんだ。


「そういえば、何で今日遅かったの?言い訳聞いてあげるよ。私、優しいでしょ」


「あら、だったら私も聞いてあげるわ。奈々美、そこは私も優しい人に入れてよね」


「うん、もちろん。お母さんは優しいよ。こんな奴の言い訳聞こうとしてるんだから」


変な茶番。


こんな茶番、いらない……!


どこが優しいの?


この人達に優しさがある?


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