いつの間にか、君に恋していたんだ。
少なくとも、私や由香ちゃんはそう思ってない。
私には、ただの悪魔にしか見えない。
心の中でしか言えない私はそう思ってしまう。
とにかく事情を説明しないといけないから、口を開いた。
「本当にすみませんでした。今日から、神崎君という友達の家の家事をすることになったんです。どうも、神崎君のお母さんが3ヶ月間いないらしくて。だから、家事をすることを引き受けてしまいました」
言い終わると、奈々美さんが訝しげな顔でこちらを見ていた。
「ふーん、優しいのね」
明らかな嫌味。
そして……
「その友達って、まさか神崎太陽?」
まさか、知っておられるとは思ってなくてドキリとした。
「知っておられるんですか?」
「まあね。私は興味ないけど、噂が出回ってくるのよ。って、待って!神崎太陽ってことは、まさか輝楽さんいたの!?」
妙に食いついて聞いてきた奈々美さん。
もしかして……
「はい、いましたよ。女嫌いだそうで、嫌そうな顔されましたけど……」
「それは、当たり前よ!あんたなんか、輝楽さんの顔見るだけでも、輝楽さんが汚れるわ!」
「誰なの?その輝楽さんというのは」
「お母さんは知らないのよね。他校でも、知らない人はなかなかいないくらいの有名人よ。容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群の3つが揃ってるの。でも、クールだから大抵の女は相手にされない」