いつの間にか、君に恋していたんだ。


「でも、裏切ったのはどうして?」


あの時のことは今でも苦しい。


本当は優しい頼君がどうして裏切ったのか知りたかった。


「あの時は頭がおかしくなってたんだ。好きな気持ちが上を行って、抑えきれなくなって、だんだん俺を好きじゃない伊鳥にイライラしてきた。だからだろうな」


やっぱり、私のせいだった。


そんな風に思わせるまで、私は苦しめていたんだ……


「伊鳥のせいじゃねぇから。俺が悪かった。なぁ、伊鳥。こんなこと言われても困るかもしれねぇけど、俺まだお前のことが好きなんだよ。忘れたことねぇ。俺とやり直せないか?」


頼君のまっすぐな想いが伝わってくる。


でも、その告白を受けることはできない。


「ごめんなさい。私、今好きな人がいるの」


頭を下げて、今度は断った。


告白を断るのは、胸が苦しい。


でも、好きな人以外の人と付き合っても、苦しめちゃうだけだし、意味がないから。


「サンキュ。おかげで吹っ切れる」


頼君は優しく笑って。


「さっきのイケメンと仲良くな。じゃあな」


片手を上げて、頼君は去っていった。


私の好きな人、輝楽さんだってことバレてたんだ…… 


まぁ、分かるよね。


申し訳ないと思いながらも、清々しい気持ちが勝っていた。


これで、全部の過去とケリをつけることができた。


本当によかった……


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