いつの間にか、君に恋していたんだ。
それが聞き間違いでないことを教えてくれる。
「伊鳥ちゃんのこと、初めは他の女と一緒だと思ってた。計算された表情で近づいて、騒いで、気持ち悪い声で名前を呼んで。俺という人間をよく知りもしないくせに好きになる。でも、違った。伊鳥ちゃんはすごくいい子で優しくて。そんな伊鳥ちゃんのことを俺はいつの間にか好きになってた」
嘘、信じられない……
輝楽さんが私のことを好きなんて……
振られるつもりだったのに。
ふと今朝見た夢を思い出した。
セリフは違ってたけど、もしかして正夢だったりするのかな?
「俺と付き合ってほしい」
夢みたいで……本当に嬉しい。
「返事は?」
「……っ、はいっ……私も輝楽さんのことが好きですっ」
堪えきれず、涙が溢れてきた。
悲しい方じゃなくて、嬉しい方の涙。
その涙を輝楽さんはそっと拭って、微笑んだ。
「嬉しいよ。よろしく、伊鳥」
さらっと呼び捨てで呼ばれて、顔が赤くなる。
ずるいよ、輝楽さんは……
「この薔薇もらってくれる?」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
薔薇を受け取ってから、頭を下げた。
すると、ぎゅっと抱きつかれる。
「輝楽、さん……」
「ふっ、可愛い」
耳元で甘く囁かれて、また顔が赤くなったのを感じた。
顔を隠すようにぎゅっと抱きしめ返すけど、輝楽さんにはきっとお見通し。
「ふっ」
その証拠に笑われたから。
少しずつ赤くなっていくのを感じながら、抱き合ったまま、私はこの幸せな瞬間がずっと続いたらいいなと思った。