いつの間にか、君に恋していたんだ。
「あんなの無視よ。神崎太陽もあんま伊鳥に近づかないでくれない?」
「それは無理ですね」
「あんた、やっぱり伊鳥のこと……」
「それ以上は言わないでください!自分で言うつもりなので。じゃあ、伊鳥!今日もよろしく!」
「うん、分かった」
今日もよろしく、その言葉が何を指すのか分かった。
太陽君なりに気を遣ってくれてるんだろうな。
「やっぱりそうじゃない。伊鳥は鈍感だから、神崎太陽も苦労するわ」
「由香ちゃん、それどういう意味?」
「伊鳥が鈍感ってこと」
鈍感って……でも、自分じゃそんなの分からないよ。
直しようがない。
「うわ、もうこんな時間。楽しい時間ってほんと経つの早いわね」
「ほんとだね。もう自分の教室に戻った方がいいんじゃないかな?」
「はぁ。時間止まればいいのに」
「あはは、それは無理だよ。由香ちゃんと話せなくなるのは寂しいけど、由香ちゃんが遅刻してほしくないよ」
「伊鳥、いい子!そして、健気!こんな可愛い子に変な輩がつかないようにしないと!」
ええっと……何のこと?
変な輩って何……?
「伊鳥、じゃあね!」
「うん、じゃあね」
困惑したけど、由香ちゃんにちゃんと挨拶を返した。
由香ちゃんのいない授業が始まる。
いつも通り刻々と過ぎていく時間。