いつの間にか、君に恋していたんだ。


「伊鳥、泣きすぎ。そんなに感動した?」


「はいっ」


私の涙を輝楽さんが拭ってくれた。


すごく優しい瞳で。


「まぁ、そんな素直で優しいところは好きだけど」


その甘いセリフで、映画に内容が吹っ飛んでしまいそうになった。


涙も引っ込む。


「あ、もう感動の余韻が終わった?」


「……そうだとしたら、輝楽さんのせいですよ」


赤い顔を輝楽さんに向ける。


最近になって気づいたけど、輝楽さんはたまに結構意地悪で……


「伊鳥、顔赤いよ?」


こうやって言ってくる。


「知ってます」


本当に輝楽さんは意地悪。


だって、分かって言ってるんだから。


「拗ねた顔の伊鳥も可愛い」


「っからかわないでください!」


「からかってるつもりないけど?」


その顔はまだ意地悪で。


「もうっ!」


「あはは。ほんと可愛い、伊鳥」


「っもう聞きません。それより、絵を描いてほしいんですよね。今、描きます」


プイと顔を逸らして、私はスケッチブックと鉛筆を手に取った。


照れ隠しっていうのもあるけど、恥ずかしすぎるから。


「ふっ、ありがとう」


輝楽さんにはそれがバレてるみたいで、ちょっと笑ってる。


私は気にしないようにして、描き始めた。


太陽君もだけど、輝楽さんも整ってるなって改めて思う。


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