いつの間にか、君に恋していたんだ。
嫉妬
今、私は輝楽さんのいるT大に向かってる。
きっかけは太陽君の言葉。
「なぁ、伊鳥。ちょっと頼みたいことがあるんだけど、聞いてもらえる?」
「うん、どうしたの?」
「輝楽兄、珍しく忘れ物したんだよ。でも、俺今からバイト行かなきゃなんないから、伊鳥が届けてくれない?」
申し訳なさそうな顔してるけど、そんな顔しないで。
だって、私は……
「うん、全然いいよ。むしろ、輝楽さんに会えるなら、嬉しいから」
そう言った後で気づく。
最後のはいらなかったかな……
いや、でもさすがにまだ好きなんてないよね……?
私の自意識過剰だといいけど……
「ははっ、輝楽兄には敵わないな。じゃ、頼むぞ!」
「う、うん。分かった」
少し切なそうな顔してたけど、まさかね……
ということで、輝楽さんのところに行くことになったの。
それにしても、ほんとに珍しい。
輝楽さんが忘れ物したことなんて今までなかったのに……
今日は慌ててたのかな……?
そうだったら、なんか可愛い。
「伊鳥!」
「伊鳥ちゃん!」
そんなことを思っていると、私を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。
明らかに知っている声。
「由香ちゃん、肇さん」
後ろを振り向くと、やっぱり由香ちゃんと肇さんだった。
デート中なのか、2人の手は恋人繋ぎをしている。