いつの間にか、君に恋していたんだ。


「ふーん。それはどうでもいいけど、解決するといいね」


「はい、そう思います」


それ以降、会話が途切れてしまった。


何か、会話を……


「あの、神崎さん」


「それ」


「えっ?」


「神崎さんっていうのやめない?太陽だって、神崎なんだから。輝楽って名前で呼んでよ」


確かにそうだ。


でも、神崎さんの瞳はどこか試すような瞳をしている。


それを不思議に思ったけど、頷いた。


「そうですよね。分かりました。輝楽さんって呼びます」


すると、なぜか分からないけど、輝楽さんが少しだけ笑った。


「ふっ。ほんと、太陽の言うとおりの子みたいだね。伊鳥ちゃんって。呼ばれて、不快な気持ちにならない」


綺麗な顔で笑顔を浮かべられたら、それはもうものすごいくらいの破壊力で……


つい、初めて会った時みたいに見惚れてしまった。


「見惚れてるの?」


「あ、えと。はい」


動揺してしまって、馬鹿正直に答えてしまった。


「んなはっきり答えるんだ。まぁ、いいけど。ほんとは俺さ、女に輝楽って名前で呼ばれるの好きじゃないんだ」


「えっ、そうなんですか?なら、何で私に呼ばせたんですか?」


「女はいつも気持ち悪い声で輝楽って呼んでくる。どこから出せるんだってくらいの猫なで声で。それが気持ち悪すぎて、無理なんだ」


なるほど。

モテる話は奈々美さんからも由香ちゃんからも聞いてた。


好きな人には、可愛くみられたいからだろうけど……私はできないな。


猫なで声なんて、出ないから。


 
< 30 / 326 >

この作品をシェア

pagetop