いつの間にか、君に恋していたんだ。


お父さんは納得してるみたいだけど、奈々美さんの視線が痛い。


「太陽君や輝楽さんと仲良くなったのね。よかったじゃない」


「うん」


奈々美さんは友好的に話しかけてくるけど、目が笑ってない。


怖い……


内心ちょっと冷や汗をかいていると、


「ほんと仲良くなったな」


そんな表面的な私達を見て、お父さんは嬉しそうな声でそう言った。


違うのに……


そんな顔を見ながら、私は思わず思ってしまった。


裕美さん達が優しいのは、お父さんの前でだけだよ。


お父さんがいなくなった瞬間、意地悪な裕美さん達が帰ってくる。


これはただのその場しのぎにしかならない。


ても、こんなこと言えないから。


お父さんの前では、私も明るく接する。


心配かけたくないから。


でも、やっぱり時々限界を感じてしまいそうになることがあるんだ。


「スパゲッティ、できたわよ」


それでも頑張って、私は偽りの仮面を被り続ける。


どうせ、お父さんがいなくなってからが地獄だけど、しょうがない。


こっちの方がマシだけど、神経はすり減らされる。


裕美さん達も一緒。


明日はきっと酷いんだろうな。


裕美さんの作ってくれたスパゲッティを見ながら、ぼんやり思う。


嬉しいことと嫌なこと、いろんなことがあった1日だった。



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