いつの間にか、君に恋していたんだ。


私なんてまだまだ。


だからこそ、咲はあんな風に怒ったんだろうな……


「確かに上手いな。こんなのなかなか描けるもんじゃない。……そういえば、1年くらい前、全国絵画コンクールで大賞に選ばれた子が出たって話題になってたな。それって……」


背筋が凍る思いっていうのは、きっとこういう思いだと思う。


輝楽さんが話してるのは、きっと私のこと。


「大賞って?」


「一般的に、佳作、優秀賞、大賞って順番で賞があるわけだけど、大賞は1番いい賞。全国で大賞なんてそうそう取れるもんじゃない」


「へー、すごい!でも、それと伊鳥の絵とどういう関係?」


「それは……」


ちらっと輝楽さんは私を見て、


「いや、やっぱ何でもない」


「えっ、何で!?」


「本人が言いたくなさそうなのに、勝手に言うわけにもいかないし、そもそも俺の推測だから」


少し冷たくそう言ってるけど……きっと、私に気を遣って言わなかったんだ。


本当に優しいな……


「それより、腹減ったし飯にしない?」


「あぁ、確かに!伊鳥、お願いできる?」


「うん、いいよ」


話が逸れて、ホッとした。


ご飯作りに早速取りかかる。


何作ろうかな……


冷蔵庫を覗かせてもらいながら、ちゃんと決めた。


カレーライスにしよう。


ご飯をセットして、スイッチオン。


その間にルーを作る。


それから、1時間かけてようやく完成した。


「できました」


「おっ、やった!カレーだ!」


「美味そうな匂いだね」


ここでの料理は苦痛じゃない。


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