DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
病院内でイチャつくのはどうかと思ったけれど、いろいろと大変な一日だったし、個室だし、少しくらいなら許されるだろう。
「なんだか、落ち着かねぇ」
「頭を打ったからじゃあ?」
「そうかもしれない。夢を見ているんじゃないかと思って……」
「夢にしては、リアルすぎると思うけど」
「だな。しばらく不便な生活を強いられるなぁ……」
ギプスで覆われた右腕に視線を遣り、しみじみと呟く。
「食事とか、入浴とか、お手伝いしましょうか?」
「いいのかっ!? でも、一日中だぞ? 隣とは言え、部屋を行ったり来たりするのは面倒だろう? それに、大事な身体だ」
「妊娠は病気じゃないですし、無理をするつもりはありません。それと、一緒に住めば、移動の必要はないですよね?」
「え……」
「辛島さんの腕が治る頃には……今度は、わたしがお世話してもらわなくちゃならないと思いますし」
「もか……」
「それから、わたしには何かあった時に決定権を委ねられる肉親がいないので、配偶者が必要です」
「もかっ」
肩越しに見る辛島さんは、柄にもなく瞳を潤ませている。
そんな彼につられて、わたしの瞳も潤む。
「ごめんなさい……たくさん、不安にさせて」
「いや、いいんだ。よく考えた上で決めたことなら、簡単には覆さないだろ?」
「そうとも限らないけれど」
「…………」
情けない表情をする辛島さんの唇に軽く唇を重ねると、そのままディープキスをしようとするので、身をよじる。
「焦らすな、もか」
「先に言うことがあるんです」
いろんなことに惑い、迷い、不安になったけれど、大事なことは一つだけだ。
「わたし……辛島さんが、好きです」