DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
「ご心配いただき、ありがとうございます。わたしなら大丈夫です。いまはすっかり元気ですし、どんな仕事だって頑張れます!」
「頑張り屋のももちゃんには、きっといい出会いがあるわよ」
「うんうん。どんな仕事でも、一生懸命働いていれば、それをちゃんと見ていて、認めてくれる人がいる。いますぐではなくても、ちゃんと自分の糧になって、後々役に立つよ」
「そうですね」
もしも、前職の上司に言われたなら、鼻で笑ってしまったかもしれない。
けれど、二十歳そこそこで自分のお店を開き、経験と勉強を積み重ね、五十年近くもお客さまに愛される店を維持してきた人の言葉は、素直に聞ける。
塩原夫妻と過ごした時間は、店名のとおり、わたしにとって大切な思い出になるだろう。
だから、最後の最後まで、自分にできる限りのことをしたかった。
「あと少しだけど、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」