DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
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年末年始の休みで実家に帰っていた優也が、二人で暮らすマンションへ帰って来るはずの夕方。
彼はマンションには帰らずに、わたしをカフェに呼び出した。
待ち合わせに指定されたカフェには、なぜか職場の後輩もいて、まるで恋人同士だったのが嘘のような冷たい表情をした優也に、
「もう気持ちはない。彼女が妊娠した。両親に結婚の報告もした」
そう言われ、その場で別れることを承諾した。
四年付き合い、そのうちの二年は同棲して、具体的に「結婚」について話し合ったことはなかったけれど、「いずれは」と思っていた。
言いたいことはたくさんあったけれど、無理に引き留めてもしかたない。
そう自分に言い聞かせ、諦めた。
彼と同棲していたマンションから引っ越して、会社でも極力顔を合わせないようにして。
彼とわたしの仲を知る人もいたけれど、誰にも別れた理由は一切口にせず、噂話からは距離を置くようにして。
それなのに、別れを告げた彼を無理やり束縛し、妊娠した後輩をいじめている――そんな噂話がいつの間にか流れていた。
相談に乗ってくれるという同じ部署の先輩の言葉を真に受けて。
食事に行って、ホテルに連れ込まれそうになって。
馬鹿な自分にうんざりした。
逃げ帰った数日後には、「結婚したくて、男漁りしている」という噂が流れていたけれど、自業自得だと思えば、誰にも相談できなくて。
時間が解決してくれる。
たかが噂話で、積み上げた仕事での評価や信頼は失われたりしない。
そう信じて歯を食いしばって働いて。
けれど、上司に呼び出され、同じ部署で働く同僚たちから「チームワークを乱している」と苦情が出ていると言われ、心が折れた。
六年間、真面目に誠実に働いてきたつもりだった。
同僚たちとの人間関係も良好で、上司からも信頼されていると思っていた。
でもそれは、すべて事実無根の、誰が流したのかもわからない「噂」で消し飛ぶほどのちっぽけな、独りよがりのものだった。
辞表を提出した日。
廊下ですれ違った「彼女」の顔には、満足そうな笑みが浮かんでいた。