DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
退く気配のない彼女に言葉で反撃するスキルがないなら、立ち去るのが一番いい。
そう思ったが、正義感の強い柚子が黙っているはずがないことを失念していた。
「石田さん。桃果に連絡を取りたいなら、わたしを通してもらいたいわ。桃果が付き合う相手は、わたしが見定めることにしているの。自分が浮気しておきながら、潔く身を引いた元恋人に感謝すらできないような男とか。世話になった先輩のカレシを寝取っておきながら、自分が被害者のように振る舞う厚顔無恥な女とか。そういうクズとは、二度とかかわらせたくないから。ああ、桃果にとって害になる相手の連絡先は、すでに削除済みの着拒済みだから、わたしと連絡がつかない人もいるだろうけど」
「ひ、ひどい……わたし、何もしていないのに……」
顔を歪め、瞳を潤ませる彼女を見て、柚子は満面の笑みを浮かべる。
「あら。害になる相手が、あなたたちだとはひと言も言っていないけれど? 思い当たる節でもあるの?」
「…………」
「そうそう、ずっと石田さんにアドバイスしなきゃと思っていたんだけど……今度、『本当に』妊娠した時には、アルコールは控えたほうがいいと思うわよ? ワイン飲み放題の女子会で酔っ払うなんて、あり得ないわぁ」
(え? 今度、本当にって……どういうこと?)
戸惑うわたしにかまうことなく、柚子は笑顔のまま、彼らに痛烈な最後の一撃をお見舞いした。
「どうぞ末永くお幸せにね? 離婚でもされて、新たな被害者が出てはかなわないもの。さ、行くわよ、桃果。楽しい気分を台無しにされたから、飲み直さなきゃ」