DOLCE VITA  ~ コワモテな彼との甘い日々
社会人になりたての頃は、仕事帰りにおしゃれなバーやレストランで合コンや女子会を楽しみ、休日には話題の遊びに出かけ、毎日のように予定を詰めていた。

その後、同じ職場のカレシができ、同期が次々と結婚退職していくにつれ、出かける機会は減ったけれど、いまのように職場と家を往復するだけの毎日ではなかった。

けれど、あの頃といまを比べれば、断然いまのほうが暮らしやすく、快適だ。

お店に来るお客さまはいい人ばかりだし、オーナー夫妻も優しく、仕事で胃がキリキリするようなストレスはない。人間関係で神経をすり減らすこともない。

とても恵まれている。

しかし、そんな恵まれた職場ともあと半月でお別れだ。

オーナーの塩原夫妻は、この八月末でお店を畳むと決めていて、わたしは失業することが決定していた。

毎日求人情報サイトを訪れて、次の仕事を探してはいるが、応募にすら至っていない。

元は営業事務をしていた。

一番望みがありそうなのは同職種で、募集もなくはないが、前の職場での出来事がトラウマになっていて、どうしても二の足を踏んでしまう。

以前働いていたのは、ホワイト企業と呼ばれる包装資材や事務用品を扱う大手専門商社。福利厚生も整った大企業だった。

しかし、どんな会社でも、人間関係のいざこざは避けて通れない。
自ら招いたものでなくとも、巻き込まれたり、とばっちりを受けたりと予測不能だ。

それらを上手く乗り越え、やり過ごす術を身に着けるのも社会人として必要なスキルだと言われれば、そのとおりかもしれない。

苦しくて、我慢できなくて、音を上げ、助けを求めても、

大人なんだから。
新人じゃないんだから。
もうアラサーなんだから。

そう切り捨てられるのは、当然のことなのかもしれない。

どれだけ仕事を真面目に頑張っていても、評価されなければ意味がないことも。
どれだけ心を傾けても、受け止めてもらえなければ意味がないことも。
人の心が移ろうのも、しかたのないことで。

世の中、そういうものなのだと思う。

けれど……


(わたしには耐えられなかった)


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