DOLCE VITA  ~ コワモテな彼との甘い日々


「話したくなければ、話さなくてもかまわない。話したくなった時に、話せばいい」

「話したくなった時に、いてくれるの?」

「絶対に、とは言えないな。チャンスやタイミングは、いつでも自分の都合のいいように巡って来るとは限らんだろ」


馬鹿正直な答えに、誠実な人なのだと思った。

わたしのことも、彼のことも、彼女のことも、会社のことも。
何も知らない人だからこそ、ありのままの気持ちを口にしても、いい気がした。

物わかりのいい恋人でもなく、後輩に尊敬されるような人徳もない。
上司の目に留まるようなプレゼン力もなく、退職を惜しまれるような能力もない。

そんな情けない人間だと思われようとも。
忍耐力のない、自分勝手な人間だと思われようとかまわない。

わたしのことを何も知らない人ならば、わたしに幻滅しようがない。


< 34 / 104 >

この作品をシェア

pagetop