DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
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暑さはさほどでもないが、強い日差しに目を細め、日陰を縫うようにして駅へ辿り着く。
午後二時という中途半端な時間だから、閑散とまではいかないが、人出は少ない。
地図アプリを頼りに歩くこと十五分。
目的の場所に辿り着いたわたしは、予想外の光景を目にして戸惑った。
(な、なんだか……とってもメルヘンでファンシーな雰囲気なんですけど?)
指定された場所は、さまざまな企業の事務所などが入るビルの一階。
雑貨などを扱っていると思われる店だった。
大きなウィンドウには、アンティークのランプや人形が、たっぷりのレースやらフリルやらと共に飾られている。
白い木製のドアに打ち付けられた金のプレートにある名前は『Salon de U.K』。
ここで、まちがいない。
いきなり足を踏み入れるのも躊躇われ、窓から中を覗いていたら、ドアが開いた。
「いらっしゃーい! 待ってたわぁ」
「え」
現れたのは、フリル満載のガーリーなドレスを着た女性。
とてもかわいらしい顔立ちではあるが、おそらくわたしより年上と思われる。
「どうぞお入りになって!」
腕を掴まれ、ぐいっと引っ張られ、逆らう間もなく店内へ引きずり込まれ……一歩入った途端、きらびやかな店内の様子に圧倒された。
真鍮の飾りが施された鏡。
天上からぶら下がる、クリスタル製の小さなシャンデリア。
豪華なドレスを着て、冷たい表情でこちらを見上げる人形たち。
カラフルな石が散りばめられた小物入れ。
繊細なレースで縁取られた真っ白なハンカチ。
壁際に置かれたトルソが着ているのは、総レースのウエディングドレスだ。
まるで、お姫さまの宝箱をひっくり返したようだった。