DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
辛島さんはふいっと顔を背け、ぽつりと呟いた。
「いってきます……」
(な、なんなの、いったい……)
「とっつぁん、出してくれ」
「へい」
安全確認の上、華麗にバックでターンを決めた車は、きちんとウィンカーを点滅させて車線変更し、信号無視をすることもなく、もちろんタイヤを軋ませることもなく、滑らかに走り去った。
「はぁ……ほんっと、どうしようもない義弟でごめんなさいね? さっそくだけれど、お仕事始めてもらってもいいかしら?」
「は、はいっ! もちろんです」
「まずは……先週、ひと目惚れしたアンティークのウエディングドレスを手に入れたんだけれど、ちょうど桃果ちゃんの雰囲気にぴったりなのよ! 宣伝用に写真撮らせてね?」
「え、あのっ……」
「髪の毛も巻いて、髪飾りはあれで……あー、もうっ! 楽しくなってきたわっ!」
(もしかして、わたし……早まった?)