DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
「遅くなるって言っても、組の連中との打ち合わせだから、八時とかそんくらいだと思うんで。あと、『もかのメシ、食いたいー』って、寝言で言ってたんで、何か食わせてやってください。あの人、甘いものは別腹なんで、ガッツリ系でも大丈夫っす」
ヤスにぃの解説に、タツもうんうんと頷いている。
「は、はぁ」
「ってことで、よろしく」
「じゃぁね! もかねぇ!」
バタンとドアが閉まり、あっさり大荷物から解放される。
(な、何なの、何者なの……く、組の連中って……)
深まる謎に、妄想が暴走しそうだ。
(とりあえず……夕食。夕食の準備をしよう。なんだか、催促されているみたいだし)
あちらから食べたいと言ってきたのだから、押し付けにはならないはず。
特別張り切ったわけではないけれど、お鍋にいっぱいのミネストローネとこんがり焼けた鶏肉の香草焼き、念のためご飯も三合炊いておく。
シャワーを浴び、スウェットのマキシワンピースに着替え、すぐに清算できるようお店やタクシーの領収証をクリップで留める。
それでもまだ、時間が余る。
(どうしよう……なんだか、落ち着かない)
狭い部屋の中を行ったり来たりしながら、コンロの上のお鍋を見て閃いた。
(そうだ! 味見! 味見をしてもらおう。ちょっとした情報収集もできるかもしれないし……)
辛島さんよりは、遥かに取っ付きやすそうな若者二人を餌で釣るべく、お隣りへ向かう。
チャイムを鳴らすとパイを片手にタツが現れた。
「はいはーい。あれぇ? もかねぇ? どうしたんっすか?」
「あの、お腹空いてたら、ごはん食べない? 辛島さんに作ったんだけど、ちょっと作り過ぎた気もして。味見もしてほしいし。運ぶのが面倒だから、うちに……」
「うぉぉっ! ヤスにぃーっ!」
ドタドタと部屋に走り込んだタツは、同じくパイを食べていたらしいヤスにぃを引きつれて戻って来た。