DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
わたしから辛島さんを誘ったことは、一度もなかった。
モテ期もなく、最後に合コンしたのもいつだったか思い出せないくらい過去の話。
そんな状態でこの年まで来てしまったものだから、スマートに、さりげなく男性を食事に誘うだけでもハードルが高い。部屋で会うほうが、気が楽だ。
(でも……外へ出れば、またちがった辛島さんが見られるかもしれない)
わたしの部屋で、我が物顔でくつろいでいる姿を見るのもいいが、外向きの姿を見てみたいとも思う。
何だかんだ言って、わたしは彼に興味津々だ。
「あ。もし、トラちゃんとデートするなら、ここオススメよ。友だちがやってる猫カフェで、割引券あるから使って! 甘いものはないけれど、癒されるわよぉ」
梅乃さんがくれたのは、『猫三昧』という名の猫カフェの割引券。
郊外にあり、交通手段は車が必須の様子。
わたしは車を所有していないため、出かけるとなると辛島さんに連れて行ってもらわなくてはならない。
誘っておきながら、それは図々しいのではと迷ったが、梅乃さんのひと言で決心がついた。
「きっと、トラちゃんの笑える姿が見られるから」